舞城王太郎『好き好き大好き超愛してる』感想
この本を読んだきっかけ
タイトルとピンクの表紙から、本屋さんでジャケ買いした本。このジャケットは、サンリオが好きな人(私)とかに刺さると思う。
買ってからしばらく積読していたのだけど、先日、友人との会話で舞城王太郎さんが話題に出てきたので読んだ。
積読している期間が長かったけれど、本棚に並べているだけでもタイトル、背表紙、書影すべてにおいて映える本だと思う。
本の基本情報、あらすじ
舞城王太郎さんの著作。
現在出版されているものは文庫版だけれど、元は『群像』2004年1月に掲載されたものらしい。
あらすじは、小説家である主人公・安藤治と、すでに亡くなってしまった恋人・吉村柿緒をめぐる恋愛を描いた物語。裏表紙に書かれたあらすじには
愛は祈りだ。僕は祈る。僕の好きな人たちに皆そろって幸せになってほしい。それぞれの願いを叶えてほしい。(後略)
とある。
現実世界と、主人公が書く作中作が交互に描かれ、現実世界では柿緒が生きていた頃に一緒に過ごした時間を軸に話が進んでいく。
物語は主人公の視点で進んでいくが、感情というより、主人公の頭の中に起こる考えを淡々と書き起こしたような文体で描かれている。
印象に残ったこと、考えたこと
タイトルから想像するに、もう少しポップな本だと思っていたのだけど、読後の感覚は、思った以上に純文学だった。読み終わってスカッとするよりは、自分ではすぐに消化できずに考えさせられることが残って、読了後に時間が経ってもじわじわ効いてくるタイプの本だった。
わかりやすいストーリーというよりは、SFぽさもある不思議な世界観で構成されるが、かといって完全にSFでもなく、現実的なシーンもある。個人的には、この作中作の部分を真面目に理解しようとすると疲れて読むのを断念しそうになり、途中からは読み進めることに重点をおいてサクサク進むようにしたらちょうどよかった。
本全体のテーマとしては、愛するとはどういうことかという普遍的な問いかけや、生と死などが根底にあるのだろうと思う。
愛について、小説などで語られる際にはウェットになりがちだけど、この作品においては、諸行無常のようなドライな雰囲気が印象に残っている。現実でそのようなシーンに遭遇したら案外こんな感じかもしれないという、奇妙なリアリティがあった。
一方で、主人公の恋人である柿緒が死後に残した手紙や、主人公の回想シーンを通じて、切なさや虚無感を常に感じる。残された時間が短いとわかっているからこそ、愛しているからこそ、どう接するべきなのか、そういう葛藤は容易に想像できる。
また、この小説では愛と死が隣り合わせに描かれている。死について、
人は心臓が止まったり脳が動かなくなって死ぬんではない。死はもっと、誰かが思ってるよりももっとずっと緩やかに始まり、終わるのだ。
というのが印象に残っている。人は死んでも思い出の中で残り続けるということと、死の喪失感は時間が解決するということをとても詩的に言い換えた言葉だと思う。
自分の死後のことを考えても仕方がないけれど、自分だったら忘れられたくないのか、それとも忘れてもらって皆には楽しく過ごしてほしいのか、次のステージに行ったとしても時々は思い出してほしいのか、よくわからない。でも大切な人のことは絶対に忘れたくないなと思う。
こんな気分の時におすすめしたい
まわりに人がいても孤独を感じている時に読みたい本。
また、虚無感に苛まれて、愛とか死とかそういうテーマの本を読みたいときにおすすめしたい。
個人的には途中の作中作の部分は、そういう気分の時には負荷が高いと感じたので、斜め読みでもテンポよく読み進めて大丈夫だと思う。
逆に、気持ちが高ぶっている時にカフェで読書しながら落ち着きたいという場面でもフィットしそう。
中村文則や坂口安吾みたいな雰囲気をもうちょっと違う文体で味わいたい人にもおすすめしたい。
まとめ
読了から時間が経ってからこれを書いているけれど、読了直後より今の方が、この本を読んで考えることがじわじわ増えている。
本のボリュームとしては軽めなので、気になった人はぜひ読んでみてほしい。
